研究概要 |
本課題は学生の授業評価アンケートと成績データを用い,学生への適切な指導法提示支援を実現する授業満足度・習熟度関連性モデルの構築を目指す.今年度は主に,1.データ収集対象の拡大,2.収集したデータを用いたベイジアンネット(BN)混合モデルの構築,3.構築されたBNおよびBN混合モデルの妥当性検証,および4.モデルを用いた指導法提示システムの試作を実施した. アンケートは原則的に個人を特定せずに実施したが,一部学生については本人の了承の下,追跡調査を今後実施していくため,記名式アンケートとした.加えてアンケート収集対象を全学科へと拡大し,アンケートの効率的な収集法についても検討した(その結果,現状ではWebによるオンラインアンケートよりも紙媒体アンケートの回収率が良好であることが確認された).収集対象の拡大に伴いサンプルデータ数も4倍前後に増加し,学年,学科ごとにBNを構築可能となった.複数学科に対応するBNからなる混合モデルを用いて,過去の特定学科のデータに対する推論を実施したところ,当該学科の混合率,および当該学科とカリキュラム的に類似した学科の混合率が他学科と比較して大きくなり,混合モデルが特定学科の学生の特徴を表現し得ることが確認できた.また,構築したモデルを用いて具体的に教員への指導法提示を行うシステムの試作版を作成し,学生および教員を被験者とした主観評価実験によって,システムの実用化へ向けた課題を明らかにした.また,実験の結果構築されたBNにより,教科間の関係や,特定教科と他教科の成績との関係など,項目間の依存関係に教員が興味を示し,システムとの対話的情報交換を求めていることも確認できた.最終年度は,これまでのデータを下に学生の追跡調査を行い,モデルによる推論が妥当であるか評価を実施した上で,教員を利用者とした,実用的な指導法提示支援システムの構築,およびシステムの特徴・性能評価を実施する.
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