昨年度に引き続き、(1)科学技術の参加型評価手法と社会的意思決定システムとの接続をめぐる諸問題の解明、(2)コンセンサス会議に絞った実用化支援ツールの作成、という二つの系統で研究を進めた。 第一の社会的意思決定システムとの接続に関する諸問題の解明については、市民参加のプロセスと政策決定との接続に関する理論的な基礎づけや、実際の制度設計、運用方法などに関する参考事例を得るため、英国で現地調査を行った。科学技術に関する市民参加・対話の取り組みを進めている研究者や実践家を訪問し、科学技術や環境の分野で多様な参加型手法を用いて展開されているプロジェクトについて、聞き取り調査および資料収集を行った。これにより、市民参加による議論テーマと手法の対応関係、政策決定との接続のあり方、それぞれの場合に適した運営体制や財源などについて考察するための材料を得ることができた。また、市民参加の場でつねに問題となる「市民/専門家」の役割分担についても、北海道の「遺伝子組換え作物コンセンサス会議」や千葉県の「三番瀬再生計画検討会議(円卓会議)」に関して実施してきた事例研究を踏まえて、プロセスを通じた「『市民/専門家』の構築」という視点から考察を深め、論文としてまとめることができた。 第二のコンセンサス会議の実用化支援ツールの作成に関しては、今年度は、ルールブック等の具体的なツール作成を進める前提として、日本におけるこれまでのコンセンサス会議手法の受容過程とその課題を明らかにすることに注力し、その結果の一部を論説として発表した。
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