研究概要 |
平成22年度は,昨年度に固まった研究の方向性をより深化させた. まず平成22年5月30日に,日本科学史学会第57回年会シンポジウム「18世紀科学史に見る理論と実践の相互作用」にて,「デービス・ギルバートとコーンウォールの技術者たち-動力技術開発における技術者と科学者との交流」と題した発表を行った.この発表を通じて,19世紀初頭,コーンウォール地方における最新蒸気機関の開発を促した要因として,地理的要因の他に,デービー,ホーンブロワー,トレビシック,ウルフといったコーンウォール出身同士の交流や協業を促進する仲介者としてのデービス・ギルバートの役割を指摘した.また,これまでギルバートはデービーや技術者のパトロンとして描かれてきたが,ウルフがギルバートに宛てた手紙には,断熱膨張に関する実地のデータがあったことを指摘し,技術者からギルバートへの逆の知的交流があったことを指摘した. 平成22年度も英国各地を訪問して,資料収集および現地の機械などの視察を行った.Royal Institution of Cornwallに収蔵されているホーンブロワー,トレビシックらの書簡類は本年度も特に重視し,資料の閲覧と収集を行った. さらに,ウィリアム・ポール(William Pole, 1814-1900)の熱学に関する研究および著作に着目した.ポールは,デービス・ギルバートの義理の息子John Samuel Enysとも関係があったと思われ,また英国の多くの技術者とも交流を持っていたと考えている.彼が関係した英国の技術者間のネットワークについては,平成23年度も継続して研究する予定である.
|