主な成果は下記のとおりである。 1.プロテオーム解析によるキジ科遺跡試料の同定:ニワトリ、キジ、ヤマドリの現生の骨標本からコラーゲンタンパクを抽出し、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MS)や飛行時間型質量分析計(TOF-MS)で種特異的なタンパク断片のピークを検索した。その結果、キジ・ヤマドリと、ニワトリのコラーゲンタンパクにはLC-MSとTOF-MSの両方で検出可能な1アミノ酸置換のあることが明らかになった。このアミノ酸置換を根拠に、遺跡から出土したキジ科の骨の種同定に成功した。コラーゲンタンパクによるニワトリの同定はすべての骨部位に利用可能で、分析に伴う試料の破壊はDNA解析より少なく、さらにDNA解析よりも成功率が高い。このため、今後ニワトリの歴史を明らかにするうえで欠かせないツールになると考えられた。 2.遺跡から出土した鳥類遺体の調査:伊礼原遺跡(沖縄県北谷町・縄文時代前期)、阿方遺跡(愛媛県今治市・縄文時代晩期~弥生時代)、朝日遺跡(愛知県清須市など・弥生時代)、久枝遺跡(愛媛県西条市・弥生時代)、宮ノ下遺跡(大阪府東大阪市・縄文時代晩期~古墳時代)、青谷上寺地遺跡(鳥取県鳥取市・弥生時代~古墳時代)、斎院烏山遺跡(愛媛県松山市・弥生時代~古墳時代)、土井ヶ浜遺跡(山口県下関市・弥生時代~古墳時代)、広島城跡遺跡(広島県広島市・江戸時代)、番町遺跡(愛媛県松山市・江戸時代)などの遺跡から出土した鳥類遺体を分析し、ニワトリとガチョウの骨の検出に努めた。その結果、宮ノ下遺跡と広島城跡遺跡の資料中にニワトリの骨を検出した。宮ノ下遺跡で検出したニワトリの骨は、管見の限り近畿地方で最古のものである。
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