平成21年度の主な研究成果は次の通りである。 (1) 愛媛県佐田岬半島の明治期の銅製錬について、佐島製錬所、女子岬製錬所、三崎製錬所、柳谷銅山製錬所跡の現地調査を行った。現地での焼鉱釜や炉跡の残存状況を確認すると共に、製錬滓試料の採取を行った。特に柳谷銅山跡では、江戸時代と同種の炉跡があり、幕末-明治期の技術の転換期の製錬技術を知る重要な手がかりとなる。(2) 山口県長登銅山で行われた古代銅製錬再現実験に参加し、製錬スラグおよび、炉底の金属塊試料の採取を行った。(3) 兵庫県多田銀銅山で現地調査を行い、平安製錬所跡でスラグの採取を行った他、国崎地区の旧坑について、現地の状況を把握した。(4) 生野銀山で現地調査を行い、金ケ瀬地区の旧坑の分布状況について把握すると共に、口銀谷の発掘調査で出土した製錬スラグや素灰の試料を採取した。(5) インド(バンガロール)で開催された第7回国際古代金属会議(BUMA-7)に参加し、蛍光X線分析による一分銀の科学組成分析について報告を行うと同時に、国外での金属生産遺跡め研究動向・成果についての情報交換を行った。(6) 中国四川省北西部のロカク地域において実施された呷拉宗遺跡製鉄遺構の発掘調査に参加し、4世紀前後の製鉄遺跡の製錬炉跡と周辺地質の調査を行い、製錬原料、製錬スラグ、金属粒子について組成分析、顕微鏡観察等を行い、遺跡の性格を明らかにした。 これらの研究成果の一部は、資源素材学会、日本鉱業史研究会、東アジア史研究コンソーシアム等で成果報告を行った。
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