平成23年度の主な研究成果は次の通りである。 (1)山口県長登銅山にて竪型炉を用いた銅製錬実験を行った。炉底の湯口から金属銅の流出を確認した。 (2)島根県石見銀山において三石錬山地区の江戸期のマンガン砂岩採掘跡の調査を行い、石見銀山野初期の銀製錬では三石錬山のマンガン砂岩が溶融剤として使用されたが、永久地区の鉱脈が採掘される頃にはマンガンを含む鉱脈の存在により三石錬山の採掘が必要なくなる事を示した。 (3)山口県長登銅山において、大切4号坑の坑内調査により戦国末期と思われる坑道堀跡を確認した。また、ザクロ石スカルンの鉱脈を確認した。また、10号坑の坑内調査により、鍾乳洞を充填する、銅分を含む洞窟充填物(銅泥)の存在を明らかにし、奈良時代の主要な銅鉱石である事を推定した。 (4)島根県石見銀山、新潟県鶴子銀山、山形県延沢銀山、谷口銀山、秋田県院内銀山の製錬スラグの化学組成分析の結果から、戦国末期に石見銀山で導入された灰吹法について、鉱石中と製錬スラグ中の"銀/銀+鉛"比から、銀品位が高く鉛の割合が少ない鉱石の場合、特に鉛の添加が銀の回収に重要である事を示した。 前年度の成果も含め、一部の成果については、資源・素材学会、日本鉄鋼協会で報告を行った。
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