十分に劣化した漆膜を作成し、効率的・かつ確実に多くの試料を分析する手法として自動分析装置(オートショットパイロライザー)を利用した分析手法の確立を目指し研究を行った。自動分析装置を利用する意義としては、多くの試料を分析することで精度の確認や試料のばらつきについての考察が出来る点において非常に重要である。 その結果、劣化をさせた漆膜は紫外線照射時間が48時間程度に達すると主たる成分が検出できないことが明らかになった。これに対して解消策として、これまでに多くの研究がなされている誘導化手法として水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)があげられるが、TMAHを導入した事例においては自動分析が物理的な障害により行えない現象が確認された。 この問題点を解決する手法として、TMAHを種々の方法で固形物に担持させることで解消させることを考案し実験を行った。その結果として、TMAHをあらかじめ洗浄したガラス繊維ろ紙に含浸後乾燥させることで、TMAHを一定の濃度で含有する誘導化用ろ紙(TMAH-GFC)を利用することが塗膜状の漆を分析する際には最適であることが確認された。
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