ベトナム産およびミャンマー産の漆液に関して、中国産の漆液を混合した塗膜を作成し紫外線照射による塗膜の色彩・光沢の変化について検討を行った。まず、乾燥速度に関しては、共に1:1の混合条件(ベトナム産もしくはミャンマー産の漆液と中国産の漆液を同重量ずつで混合する)においては、乾燥速度の大きな向上が認められた。しかし、中国産の漆液の重量以上のベトナム産もしくはタイ産の漆液を混合すると、混合前後での乾燥速度に大きな変化は認められなかった。このことから、混合割合は同重量ずつが限界と考えられる。しかしながら、劣化に関しては混合によってほぼ混合比と比例した光沢や色差の変化が見られた。このことは、乾燥速度と劣化・混合比にはそれぞれ異なった因果関係があることが窺い知れる。 その一方で、高感度化分析をベトナム産・ミャンマー産の漆液について適用し実験を行ったところ、ベトナム産漆に関しては21年度の結果と同様に大きく感度が上昇するという結果を得た。ミャンマー産の漆膜に関しては、高感度化の有無にかかわらずかなり高い検出値を示しており、必ずしも高感度化が必要ではないことが明らかになった。 これに関しては、UV/Py-GC/MSを用いた検討結果からミャンマー産の漆に特有の構造であるチチオール中に含まれる側鎖末端のベンゼン環のα位の炭素部分が、紫外線によって積極的に酸化され他の部分(架橋に関わる部分)の開裂を引き起こさないために感度の減少が起きないとの結果を得た。
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