昨年度までに揃えた、デジタルカメラ、近紫外~可視~近赤外までの各種単光(各波長のLED光源)、白色光源(撮影用電球)、バンドバスフィルターなどからなるシステムを用いて、和紙、洋紙、絹などのサンプルを様々な条件下で撮影を行った。カビの発生した和紙サンプルでは、まず高感度の蛍光光度計を用い、精密かつ高波長分解能で測定した励起および蛍光スペクトルを基礎データとし、これをもとに、紫外練を照射して顕微鏡下でカビ由来の蛍光を目視できることを確認したうえで、微弱な発光をデジタルカメラで確実に捉えるための光源やフィルターの選択、露出条件の設定について検討を行った。さらに、インクや染料などには蛍光を発するものもあり、また繊維屑なども同様の性質を持つものが多く、それぞれを区別するための照射波長や検出波長についても検討を進めた。これまで検討を進めてきた結果より、同じサンプルを単色LED光源とバンドパスフィルターによって、複数の照射・検出波長条件下で撮影し、画像をコンピューターで処理をすることによって、特定の物質の蛍光のみを検出しうることを見出した。しかし、カビとその他の付着物、さらにカビの種類までを具体的かつ確実にデジタルカメラによって撮影した画像から区別するには、まだ実験的な検証が必要であるし、さらに可視光と近赤外光を照射光としてどのように活用しうるかについても、検討の余地がある。これらについては、今後も研究を進めていきたい。
|