平成22年度には、これまで都道府県における無形民俗文化財の指定・選択の状況自体が十分に把握されていなかったということを踏まえて、各都道府県の指定・選択無形民俗文化財の一覧を作成すべく情報収集を行った。とくに無形民俗文化財の一部をなし、本調査研究においても主要な対象となる民俗芸能は、昭和50年以前は無形文化財として指定・選択されており、多くの都道府県で昭和50年以後に無形民俗文化財に再指定されていることから、最初に文化財指定を受けた年代等を確認する必要があった。こうした追跡調査は来年度も継続して行う。 また事例調査として、民俗芸能の公開に関する事例と、記録作成に関する事例の調査を行った。 公開の例としては、岡山県で開催された第25回国民文化祭・おかやま2010「あっ晴れ!おかやま国文祭」の民俗芸能関係イベントの現地調査を行った。国民文化祭は、文化財保護とは異なる芸術文化振興の一環として位置づけられており、民俗芸能をはじめとする各種の無形文化財・無形民俗文化財が多数参加しているが、その意義や影響等は、従来ほとんど問題とされてこなかった。子どもなど、地域社会においては民俗の担い手となりにくい主体の、体験的な参加が高く評価されたり、伝統的な様式にこだわらず、創作やフュージョンを積極的に行うなど、国民の文化活動への参加をうながすことを一つの目的とする芸術文化振興の観点から、文化財保護の事業とは異なる性格が明らかになった。 記録作成に関する事例としては、昭和50年代に鹿児島県歴史資料センター黎明館の企画で調査と映像記録作成が行われた、鹿児島県いちき串木野市羽島の羽島崎神社春祭に伴う芸能の現地調査を行った。その詳細な検討は来年度に行うが、比較的早い時代の映像記録作成事業の成果は、上映機会が限られるフィルムでの製作ということもあり、地元においてもあまり知られていない現状がうかがわれた。
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