研究概要 |
平成22年度の研究実績は以下の通りである. 1.衛星写真・空中写真による地形判読:本年度は,ブータン南部の範囲を対象として,CORONA偵察衛星写真と空中写真の判読により,断層変位地形を抽出し,5万分の1地形図に断層変位地形をマッピングした.その結果,以下のことが明らかになった.1)主に東西走向の断層が多い.2)長さ30kmより短い断層からなり,地域によっては東西走向の断層が4~6条にわたり平行して分布する.3)東西走向の断層のうち,平野と山地の境界では北側隆起の断層変位を示すが,山地内は南側隆起の断層が多い.4)山地内の断層には,北西-南東走向の断層は右横ずれ変位,北東-南西走向の断層は左横ずれ変位をもつ断層が認められた.5)東部では,古い地質断層に活断層が集中する傾向が認められる.上記の結果は,ブータン南部の活断層の分布・変位様式を明らかにした点で,世界で最初である. 2.現地調査 1.で明らかにした断層変位地形の中で,最も典型的な断層地形であるブータン国ゲレフ市周辺を対象に現地調査を実施した.現地調査によって,以下のことを明らかにした.1)後期更新世に形成されたとみられる段丘地形が約50m以上変形していること.2)異なる高さの段丘面が累積的に変形していることから,同じトレースで繰り返し断層変位が生じていること,3)沖積低地上にも鮮明な断層トレースが認められることから,ごく最近の地質時代にも断層活動(=大地震)が発生したことなどを明らかにした.
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