研究概要 |
平成23年度の研究実績は以下の通りである. 昨年度に引き続き,CORONA偵察衛星写真及び空中写真の実体視判読によってブータン国内全域を対象に活断層の抽出を行った.その結果,低ヒマラヤ帯において,活断層が新たに発見された.前年度の調査結果とあわせて考えると,前縁帯では,長さ30kmより短い断層群からなり,地域によっては東西走向の断層が4~6条にわたり平行して分布する.東西走向の断層のうち,平野と山地の境界では北側隆起の断層変位を示すが,山地内は南側隆起の断層が多い.低ヒマラヤ帯の山地内においては,断層はさほど分布していないこと,南北走向の断層が認められることなどが明らかになった. インド・ネパールでは,過去の地質構造に沿って活断層が発達するという類似した断層構造が広く認められるものの,ブータン周辺では,このような特徴が認められず異常な断層構造であることが明らかになった. このことは,1)ブータンのみ,チベット高原で認められる南北走向の断層発達がヒマラヤ山地内まで達していることを示している可能性があること,2)ブータンのブラマプトラ平原の基盤が地表近くまで露出していることから,断層のマイグレーションがスタックしていることがその原因として考えられる.ネパールでは,、ヒマラヤ前縁に認められたシワリク丘陵背後の横ずれ断層を対象に写真判読及び現地調査を行った.その結果,河谷や段丘地形を変位させる横ずれ断層が存在することを明らかにした.また,前縁帯活断層の記載を行い,セグメンテーションについて検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ブータン,インド,ネパールの現地調査で実施し,活断層の分布や変位様式について,従来の研究とは大きく異なる結果を得ていることから.
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