研究概要 |
本研究では積雪量の減少による植生変化の実態を明らかにすることである。そのたために、積雪量の変化に敏感な湿原を対象として植生変化を検出した。 今年度は中部地方を中心に調査を行った。具体的には次の3点を検討した。 1.山地湿原の面積変化→中部地方を代表する湿原である黒部川源流部および黒部川中流部、八ケ岳周辺、白馬岳周辺の湿原植生の面積を経年的に追跡した 2.山地湿原の植生構成種の変化→黒部川源流部および黒部川中流部、八ケ岳周辺、白馬岳周辺の現地調査をおこなって植生変化の状況から、湿原の植生変化はチシマザサおよびハイマツ・オオシラビソの侵入によるものである事があきらかとなった。 3.積雪量の変動と植生変化との比較検討→1,2で得られた植生変化と積雪量変動の対応を気象観測資料から検討するために、黒部川流域の各関係機関に要請して積雪量観測記録を入手し、積雪量変動を追跡した。また、積雪が形成する環境が植物へどのような影響を与えるかを調査するために、八ケ岳周辺および尾瀬ケ原において積雪環境の調査をおこなった。 以上の1.から山地の上部、とくに頂上部や尾根部に位置している湿原では面積に縮小が認められた。さらに2.から、積雪量が減少した際に特徴的であるとされる植生変化が認められた。また、3.から、積雪量の減少が裏付けられた事から、尾根上部などの立地は積雪量の減少の影響が大きいため植生が変化したと考えられた。
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