研究概要 |
横ずれ活断層の過去数万年~数十万年における構造発達過程を解明する調査を実施した.研究対象地域は,岐阜県東部に北西~南東方向に分布する阿寺断層帯とした.断層帯全域の空中写真判読を実施し,構成する断層の詳細分布と位置,幾何形状を確認した.また断層と交差する河成段丘面の区分と対比,編年を行った.また各段丘面の変動地形とその変位を確認した.さらに地形・地質調査を実施し,構成層の確認,テフラや14C試料を採取し,段丘面の編年を決定すると共に,変位量を計測した.また地形面の分布が良好ではない東側の断層については,断層露頭から堆積物の変位状況を確認し,活動性の指標とした.また加子母二渡地区においてトレンチ調査を実施し,分岐断層の活動性を明らかにするための良好なデータを取得した.調査の結果,阿寺断層帯東部の白谷断層などは,基盤の濃飛流紋岩には顕著な断層が認められるが,段丘面に変位を殆ど与えておらず,第四紀後期,特に最終氷期極相期以降の顕著な活動は確認できない.一方で,谷底北東縁の阿寺断層や小和知断層は,最終氷期以降も顕著に活動している.さらにトレンチ調査の結果,二渡地区阿寺断層北東端付近の北西分岐断層では,その基底にATの純層を含んだ沼沢地性堆積物に明瞭な変位を与える.この堆積物が断層上昇側に見出されるため,本断層トレースの活動時期は,AT堆積以降に開始したものである.従って一部部分的な状況資料ではあるが,断層帯東部に並走する断層は,第四紀後期以前に活動を停止した一方,西側の谷底東縁の断層では,第四紀後期以降に新たな活動を開始しており,断層線は成長衰退しながら,約1km程度西方へ活動場を移動してきた可能性が高いことが明らかとなった.
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