研究概要 |
1.19世紀気象観測記録のデジタル化 昨年度デジタル化が完了した19世紀後半のインドネシアにおける日雨量観測記録のデータの品質管理,およびメタデータの作成を行った.時間的・予算的制約により予定した作業の約80%は完了し,その利用可能なデータにもとづいて,解析を行った. 2.19世紀の気候変動に関する解析 インドネシアにおける降水量変動を,デジタル化の完了した19世紀後半と既存の20世紀後半のデータで比較した.季節変動を比較した結果,インドネシア東部において降水量のピークの時期が,20世に遅くなる地点があり,逆に西部においてはピークが早まる傾向にある地点が見受けられた.また,年降水量の平年値は,多くの地点において,19世紀より20世紀の方が乾燥傾向にあった. 3.デジタル化したデータの公開 英国気象庁および米国海洋大気圏局のデータレスキューワーキンググループ,Southeast Asian Climate Assessment and Dataset(SACA&D)へデータを提供し,品質管理の完了した一部のデータを一般に公開した. 4.グローバルスケールからみた小氷期末期の東南・東アジアにおける気候の特徴解明 これまで東アジアの気温データでは,小氷期末期(19世紀中頃)急激な気温変動が確認されていたが,東南アジアの主要地点(ジャカルタやマニラ,ハノイなど)では特に有意な変化は見られなかった.しかしながら,降水量(季節変動や年降水量)は19世紀と20世紀で特徴的な差異が認められた.この降水量の変化傾向が,小氷期から温暖期に移る際の特徴なのか,今後さらに詳細なデータの整備と,解析が必要であると考える.
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