平成21年度は、まず領域気象モデルWRFを用いて、熊谷が猛烈な暑さに見舞われた2007年8月15~16日の再現計算を行った。その結果、現象がある程度再現され、当日の猛暑の主要因が日射による熊谷地域の地表面加熱やフェーン現象であることが示唆された。それと同時に、本研究課題の主目的である細密な土地利用データと高度な都市キャノピーモデルの利用が、モデル再現性の向上につながることも示唆された。また、2009年2月20日に、冬ではあったが熊谷地域で周辺よりも特に高温となる現象が起こったため、その事例の再現計算も行った。その結果、昇温の要因は南方から移流した暖気が熊谷付近で下降したためであることが示唆された。これら2事例だけを見ても、熊谷高温要因が多様であることが示唆され、本研究課題である熊谷地域の昇温要因の定量的な切り分けに対する意義をさらに深めた。さらに、熊谷市街地を含む約8km四方について、住宅地図と植生調査図をGISによって組み合わせて、細密な土地利用データを整備した。そして、WRFモデルに作成した細密データを取り込み、予備的なシミュレーションを行ってこれまでのやや粗い土地利用データと詳細なデータとの結果の違いを比較した。その結果、土地利用の違いにより場所によっては4℃の地上気温の違いをもたらしていた。また、現実より弱いものの熊谷市街地のヒートアイランドが再現された。ヒートアイランドの再現性向上には、本研究課題で実施する、高度な都市キャノピーモデルSUMMとWRFの結合モデルの構築が鍵となる可能性がある。平成21年度にはWRFとSUMMの結合作業は思うように進まなかったので、平成22年度以降できるだけ早い完成を目指し努力したい。
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