研究の目的は過去70万年における大気エアロゾルの組成を復元することであり、本研究課題において2万年分解能で組成を抽出することを目標とした。過去めエアロゾル組成を時系列的に連続な状態で残存しているのは極地氷床のみであると思われる。南極ドームふじ氷床コアから水溶性のエアロゾル組成を抽出するために、氷をはじめとする揮発性の成分を融解させずに取り除く必要があった。そこで、-50℃の環境で不揮発性粒子を集める方法を確立した。 確立した方法は試料の分注に時間がかかることから、コピー機を作成した。コピー機に必要な備品や消耗品に経費の大半を充てた。二機の装置を用いて、今年度(H21)と来年度(H22)の目標である36試料のうち28試料の抽出を終え、20試料のエアロゾル組成を分析した。その結果、氷期間氷期スケールの気温変動に対応するように温暖期では硫酸ナトリウムが寒冷期には硫酸カルシウム、塩化ナトリウムが主成分であることが明らかとなり、南極上空に存在していた水溶性の大気工アロゾルはその組成が気候ステージで異なっていることが分かった。 大気中に存在するエアロゾルの組成は放射特性、雲核としての特徴に違いがあり、今後地球大気の熱収支変遷に重要な要素にあるであろうと思われる。その意味で、過去数10万年間のエアロゾルの組成の変遷を探る意義は大きく、来年度も精力的に研究を継続したい。
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