衛星センサASTERの熱赤外画像を利用した日本の各地に点在する小水域(小規模な湖沼や溜池等)の水温データベース構築に向けて、初年度である平成21年度は、(1)ASTER熱赤外画像から小水域の水温を推定するソフトウェアの開発、(2)茨城県内の小水域を対象とした水温データセットの整備、(3)データ検索用Web GISサーバの構築、(4)水戸市千波湖における常時水温計測、を実施した。(1)では、本研究代表者が既に開発していたASTER熱赤外画像用の放射量校正、迷光補正、大気補正法に基づいて高精度に小水域の水温を推定するソフトウェアをLinuxサーバ上に構築した。(2)では、まず電子国土ポータル等を利用して茨城県内の小水域の位置や大きさをリスト化し、次に2000年以降、約10年間に観測された茨城県付近のASTER画像を入手して(1)のソフトウェアを適用し、各小水域の各観測日での水温を推定した。(3)では、Google Maps APIを使用した試作版を構築し、テストデータとして(2)のデータを入力した。(4)は検証用データの取得のために実施しているもので、茨城県及び水戸市の許可を得て、2009年8月より水戸市千波湖の湖心付近にて水面下数センチの水温を10分間隔で計測している。同サイトにおいて、平成22年3月末までに晴天下で計9回のASTER同期観測(昼6回、夜3回)に成功し、(1)のソフトウェァを適用した結果、現場水温との差は概ね1℃前後に収まっており、期待される精度が得られることを確認した。今後は、千波湖における検証データの継続的取得とそれを用いた水温推定ソフトウェアの検証と改良、対象地域の拡大、WebGISサーバの運用版の構築を進めるほか、ミクセル解析に基づく小水域の水温推定法や水温トレンドの比較に基づく小水域の分類法の開発も進める予定である。
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