研究課題/領域番号 |
21710003
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
外岡 秀行 茨城大学, 工学部, 准教授 (80261741)
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キーワード | 湖沼 / 溜池 / 表面水温 / リモートセンシング / ASTER / 熱赤外 / データベース / Web |
研究概要 |
本研究は、衛星センサASTERの熱赤外画像データを使用して、日本の全国に点在する小水域の表層水温の時系列データセットを整備し、公開することを目標としている。研究期間は4年であり、3年目の23年度は、データ配布用WebGISサーバを改良し、2000~2008年のASTERデータによって算出した、全国約900箇所の小水域の水温データを含むデータベースを試験公開した。一方、ASTERによる各小水域の晴天観測は年平均約2回で時間分解能が低いため、空間分解能は低いものの、ほぼ毎日全国を観測しているMODISの熱赤外データを利用したサブピクセル代表水温推定法の開発も進めている。23年度は、同手法の改良を行って精度を向上させ、シミュレーションによりその有効性を検証した。加えて、別アプローチとして、地上気温に基づく水温欠損値補完法の開発も進めており、その推定精度として約2℃を達成した。これらの手法による推定水温データは、24年度中に水温データベースに入力する予定である。さらに、水温データベースの応用研究として、水温の変動傾向の比較解析に基づく小水域分類手法の開発を進めており、23年度は気温との偏差に着目して分類する手法を開発し、24年度中に最終結果を報告する予定である。加えて、フィールド検証については、水戸市千波湖にて21年8月より10分間隔で水温測定を継続しており、ASTER水温推定法の検証に使用している。また、同湖に設置予定の水温遠隔収集システムの開発を進め、23年度は試験機を開発した。さらに、23年10月には、溜池が多数点在する讃岐平野にて、溜池及び周辺環境の現地調査を行い、水温データベースの検証評価に活用した。そして、以上の成果の一部について、SPIE Remote Sensing 2011及び日本リモートセンシング学会にて研究発表を行った。以上が23年度の研究成果である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全国900か所の水域を含む水温データベースの試験公開の開始、サブピクセル水温推定法の改良、気温データによる水温欠損値補完法の開発、水温の変動傾向に基づく小水域分類法の開発、フィールド検証の継続実施、等は計画通り、あるいは計画以上の進展と考える。一方、データベースのユーザビリティ(検索機能など)に改善の余地があること、サブピクセル水温推定法による水温データの作成が未完了であること、雲スクリーニング法に改善の余地があること、等は、やや遅れていると考える。以上により、「(2)おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の推進方策としては、データベースのユーザビリティの改良(検索機能の充実化など)、水温データの拡充(登録する小水域の追加、2010年以降の水温データの追加、MODISデータを用いたサブピクセル代表水温推定法による水温データの追加、地上気温を用いた水温欠損値補完法による水温データの追加など)、水温データの精度向上(雲スクリーニング法の改善、水生植物や結氷等の評価、メタデータの整備など)、水温変動傾向に基づく小水域分類法の結果のとりまとめ、水戸市千波湖における検証用水温計測の継続、等を予定している。また、成果の一部を国際会議で発表すると共に、4年間の成果を総括し、国際ジャーナルへ投稿することを予定している。
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