本研究は、地球観測センサASTERの熱赤外画像データを利用して日本全国に点在する大小様々な湖沼を対象とする水温時系列データベースを整備公開することを目標に、2009年度からの4年計画で実施したものである。2009~2011年度は、ASTERデータから水温を推定するアルゴリズム及びソフトウェアの開発や公開用Web GISシステムの開発等を行い、加えて千波湖(水戸市)に水温モニタリングサイトを設置してASTER推定水温の検証を実施した。最終年度である2012年度は、雲や陸等の混入による異常値を除くためのスクリーニング処理の開発や、時間分解能を改善するためのAMeDAS地上気温に基づく水温欠損値補完法の開発等を進め、これらをシステムに実装した。また、対象とする湖沼を934に増加させた。こうして、衛星湖沼水温データベース日本編(Satellite-based Lake and Reservoir Temperature Database in Japan; SatLARTD-J)を完成させ、2012年7月にベータ版を、同10月に正式版(Ver. 1.0)を公開した(http://tonolab.cis.ibaraki.ac.jp/SatLARTD/)。本データベースには、現在、934の湖沼の2000~2008年における時系列水温データが含まれており、Web画面上で選択した湖沼の水温データを数値及びグラフによって表示する機能を有している。水温データには、時間分解能が平均で約3回/年と低いものの、水温精度が約1℃と高いASTER推定水温と、水温精度が約2℃と低いものの、時間分解能が5日間隔と高い回帰推定水温が含まれている。わずかな水温変化でも生物種を遷移させる例が報告されていることから、本データベースは生物多様性の保全や水質モニタリング等において、今後、活用されることが期待される。
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