研究概要 |
氷床コアの解析により,過去の気候を推定するため,水の安定同位体の分析が行なわれている.しかし氷は堆積後に氷の塑性変形変形を受けるため,堆積時の情報を正確には,それらの移動について知る必要がある.同位体の拡散については,自己拡散速度については推定されているが,粒界拡散を伴う多結晶氷の粒界拡散速度については,未知である.そこで,既知の同位体分布の氷を人工的に作成し,この分布の時間変化から同位体の拡散速度を明らかにすることを目的とする. 今年度は,まず設計した装置を完成させた.次に試料チャンバでの氷試料の冷却方法を検討した.氷試料のアブレーションは,試料チャンバ中で,1Paオーダーで行なうので,試料温度は,-100℃以下とする必要がある.アブレーション時は,液体窒素を気化させたガスを試料チャンバ下層に導入し,ガラスで仕切られた上層の氷を伝熱で冷却する.このため,氷試料は,まず-10℃下で底面に真空グリスを塗布してガラス上に置き一部冷着し,試料チャンバを組立て,次にこのチャンバごと-60℃まで予冷する.その後,液体窒素の気化ガスで冷却することにより,試料が割れることなく,1Paオーダーの真空下でほとんど昇華や凝結することなく2時間以上安定して試料表面の粒界が観察できるようになった.次に試料チャンバから質量分析器に試料導入を試みた.試料導入されることは確認できたが,時間遅れが生じ,また試料が残留するといった問題が明らかとなった.このため,質量分析器,試料チャンバ,試料導入部を高真空度化の方向で改善を行なった.
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