研究課題
本研究は、水圏生態系における高分子有機物再利用系の動態を知ることを目的とし、溶存態・粒子態有機物の動態に関与する微生物群集の組成と機能に着目して、海洋での有機物代謝過程について、微生物群集の中で"誰が""何を"し、どのような相互作用があるのかを理解することを目指している。そのために研究全体として、1. 海洋から分離した細菌単離株を用いたアプローチ、2. マイクロコズムを用いた実験的アプローチ、3. 天然環境の調査による観測的なアプローチを計画した。平成21年度は、1および2のそれぞれ一部を実施し、引き続き現在も進行中である。1 に関しては、沿岸・外洋(表層・深層)を含む様々な環境の天然海水から細菌株を分離し、それぞれの細菌単離株について、エンド型・エキソ型のプロテアーゼ活性を中心とした有機物分解特性を分析中である。株により有機物分解特性が異なることはわかってきたが、今後も引き続き分析株数を増やし、さらに、分離株の遺伝子解析による系統グループ分けと合わせて解析を行う。2 に関しては、北太平洋の亜熱帯海域および亜寒帯海域において、ポリマー型有機物が添加された場合とモノマー型有機物が添加された場合とで、海水中の微生物群集全体および群集を構成する各微生物がどのように応答するかを評価するための海水マイクロコズム実験を実施し、各マイクロコズム中の細胞外加水分解酵素活性およびその特性・微生物活性・微生物群集構造の変化を追跡した。その結果、マイクロコズム中の細胞外加水分解酵素活性・特性については、添加される有機物の種類により応答が異なることがわかった。その他の項目については、採取した試料を分析中である。
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Interdisciplinary Studies on Environmental Chemistry, Vol.2, Environmental Research in Asia
ページ: 287-291