本研究においては、大気中での反応性ヨウ素化合物の新たな生成過程の解明を目的に、時間分解型キャビティーリングダウン分光法などの反応測定装置を主に用いて、硝酸ラジカル(NO3)とヨウ素分子(I_2)などのヨウ素化合物の反応の測定と反応速度定数の決定を行っている。NO_3ラジカルとヨウ素化合物の反応を上記の反応測定装置を用いて測定することにより、反応速度定数の決定を行うことができる。また、同様に反応速度定数の圧力・温度依存性を調べることにより、大気組成変動の予測モデル計算などに用いることのできるデータとしての反応速度定数を得ることができる。このようにして、測定した反応が与える大気への影響を検討していくことが本研究の目的である。平成21年度においては、時間分解型キャビティーリングダウン分光法を用いてNO_3ラジカルとヨウ素原子の反応の測定を行い、反応速度定数を決定した。この反応の速度定数の値は、これまでに1991年、1992年、2008年に異なった研究グループにより報告されているが、それぞれの報告値はことなっている。本研究で決定した値は2008年に報告されている値には比較的近い値であるが、それでもその値より2倍ほど小さい値となっている。このことより、NO_3ラジカルとヨウ素原子の反応の大気における影響を再評価し直す必要があることが分かった。また、これまで調べられていなかったNO_3ラジカルとヨウ素原子の反応の圧力依存性と温度依存性も関しても本研究で明らかにした。その結果、この反応の実際の大気条件下での影響を評価できるようになった。これらの結果は国内学会や国際ワークショップにおいてすでに発表しており、今後、論文にして公表していく予定である。
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