研究課題
本研究では、陸上土壌、海洋、生物体内の腐植化過程において普遍的にみられる天然有機物の生化学的特性を解明することを主目的とした。そこで、異なる生態系において、天然リターのリターバック分解実験を行い、異なる環壌中で腐植化過程においてどのような生化学的普遍性が見られるかを、加水分解性アミノ酸及びアミノ糖収量などを比較することで調べた。また、長期的な普遍性を明らかにするため、クロノシークエンスに沿った火山灰サンプルを採取・比較し、これを短期的な変化であるリターバック実験の結果と整合させ、議論した。その結果、陸域と水域で行ったリターバック実験のサンプルは、どちらにおいても、リター中の加水分解性アミノ酸の単位炭素あたりの収量、ならびに加水分解性アミノ等の単位炭素あたりの収量が、分解段階が進むと共に増加する傾向が顕著に見られた。また、グルコサミン(GlcN)とガラクトサミン(GalN)の比であるGlcN/GalNが、分解とともに減少し、概ね4-15ほどであった比が、1~2に落ち着く傾向が見られた。こうした分解における生化学的変化は、植物体由来の物質が、微生物体由来の物質に変化していることを示唆していた。また、こうしたことが異なる環境下で同じように起きていたことは、天然有機物の腐植化過程において、普遍的に微生物影響が生化学的特性の変化に寄与していることを示唆している。また、クロノシークエンスに沿った変化としては、アミノ酸・アミノ糖の収量は時間軸に沿って増加する傾向は見られなかった。一方で、GlcN/GalNは、古い有機物ほど低い傾向を示し、短期間での有機物分解と同様の結果となった。このことは、数万年レベルの長期間でも微生物影響が継続していることを示すと共に、GlcN/GalNが減少するという普遍的な生化学的変化が腐植化やdiagenesisの過程でみられるものであることを示していた。
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酪農学園大学紀要
巻: 36巻 ページ: 53-58
European Journal of Soil Biology
巻: 47 ページ: 114-121