本年度は降水システム(以下、PS)データベースVer.1の開発を目指し、始めに個々のPSの定義を再検討した。マイクロ波放射計による降水判定には地表面射出率の正確な推定が必要であり、これに取り組む他研究計画(GPM複合アルゴリズム開発)の進捗状況を鑑みて、現時点ではマイクロ波放射計による降水判定の導入は見送ることとした。衛星搭載降雨レーダの走査端でカットされるシステムについてはフラグを立て、レーダのみで判断できる降水システムの定義と限界を明確にする方針とした。 PSデータベースに求められる条件を検討し、次の2点に取り組んだ。ひとつは水文分野の研究者が会したJAXA水循環ワークショップ等でも必要とされていた地表面降水量の高解像度格子データの開発に焦点を当てた。どのような降水システムがどれだけ観測されたかが分かるようPSの規模や降水タイプによって分類したことが本データセットの特長である。この高解像度のPSデータセットを活用するうえで、特にサンプリング誤差の定量的な評価を検討する必要性が生じ、ふたつめのテーマとして降水システムの観測パターンによる推定誤差の評価を実施した。対象を日本近傍に限定してAMeDASデータとの比較を行い、12/18に名大地球水循環研究センターの研究会合で報告した。この比較研究では、地域や季節による誤差の程度を示し、PSのサンプル数だけでなく、衛星搭載降雨レーダの観測特性やアルゴリズムの課題を考慮することが重要であることを例示した。具体的には、冬季に背の低い降水が山岳域で見えにくい可能性が増すこと、夏季に強雨の減衰補正が効きすぎていることなどが示された。
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