本年度は降水気候値を構成する降水システム(以下、PS)群の時空間変化に関する研究、高解像度降水データの誤差・信頼性評価、データベース公開用webの開発を進めた。PS群の時空間変化に関しては、季節変化パターンのクラスター分析や地形性降雨の特徴の抽出に取り組んだ。これらは海陸に渡る衛星搭載降雨レーダ(TRMM PR)が長期間データを蓄積したことによって可能となる局地気候学を例示するものである。 高解像度降水データの提供に向けて誤差評価が不可欠であるため、AMeDAS10分値データと同期するTRMM PRデータを用いてサンプリング・リトリーバル誤差の評価を実施した。また、降水統計値が複数のイベントの平均的特徴であるかどうか、インパクトの大きい大規模なPSのスナップショットが偶発的に現れた値かどうかを区別し、サンプリング数および各地域のPS特性の双方に起因する誤差を示した。これらの結果は昨年7月のAOGS年次総会にて発表した。データセットの誤差評価の一環として、観測視野角の違いによるプロダクトの整合性に関する調査も行い、結果をまとめた論文をAMSのJTECHに投稿した。また、TRMM PRのアルゴリズムが改訂される時期と重なったため、新プロダクト候補に関する同様の検証も行い、2011年1月14日にJAXAのテレビ会議にて発表した。これらの解析により、降水の地域分布や年々変化の解釈に影響を及ぼす不確定性が残存していることが示された。
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