熱帯降雨観測衛星搭載降雨レーダ(TRMM PR)によって観測された空間規模で分類した降水システム(以下、PS)群を調査し、大規模PSの瞬時値の痕跡が長期平均値に残存していること、データ蓄積期間とともに高解像度の降水気候値に統計的な解釈が可能となってきたこと、小規模PS群の日周変化等の地域性(島効果等)が見られることを示した。 また、気候学的特徴の信頼性を検討するうえで、リトリーバル誤差の補正と新しくリリースされたV7データへの対応が喫緊の課題となったため、JTECHに受理された入射角依存性に関する研究をTRMM PR V7に適用し、特に降水気候値や年々変化の解析における推定誤差の影響を評価した。この結果は、JAXA V.7評価チーム会合、AOGS年次総会、気象学会秋季大会、世界気候研究計画OSC、HyARC/GSMaP研究集会、JAXA/EORC研究会合にて報告し、現在もTRMM PRプロジェクトサイエンスチームと連動して調査を進めている。 さらに、PSデータベースを提供するwebを開発した。このwebでは、高解像度の長期平均降水データ(月別、時別、PSの空間規模別)を提供するとともに、これらの情報をGoogle Map上で可視化しており、スライダーを用いた各種分布図の時間変化、透明度を変えた背景の地図情報との重ね合わせ、ズームした高解像度(0.1度)の降水分布を見ることができる。現時点ではパスワード認証を設けてTRMM PR V6で作成した情報を一部ユーザーに公開し、意見を収集している。長期的な特徴を議論するためにはTRMM PRの最新プロダクトを利用することが推奨されるため、V7で一新し、一般公開に向けて準備を進めている。
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