研究課題
平成22年度は、1.昨年度におこなったGRACEデータからの水質量移動の経年変化の情報の精度改善、および、2.観測された水の経年変化に対する気象学的な解釈を中心におこなった。1.精度改善については特に、南極域における氷床変動の見積もりをより厳密なものにするため、ICESat衛星高度計データを併用したポストグレーシャルリバウンド(PGR)成分との分離手法の改善をおこなった。結果として、少なくとも西南極においては、現行のいくつかのPGRモデルのうちIJ05モデルが最も観測値と調和的であることが示され、氷床変動量の見積もりに一定の拘束条件を与えることが可能となった。2.経年変化の気象学、気候学的な解釈については、テストケースとして、インドシナ半島において2004年はじめに観察された陸水の経年質量変化トレンドの大きな変化の主要因の解明を中心としておこなった。ローカル、グローバルスケールの水文モデルおよび実観測データからの気候インデックスとの相関の比較結果から、この変化の主要因がリージョナルな揚水量変化によるものではなく、グローバルなスケールのインド洋ダイポールモード現象によることが示唆された。このような数年~数十年スケールの周期を持った気候システム変動は、長期的な水の滞留時間の見積もりの際には、分離、除去して扱うべきものであり、今後、他の地域についてもこうした影響があることを踏まえてディスカッションをおこなうべきであることが示唆された。
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