研究課題
海洋細菌(原核生物)群集は、様々な炭素含有基質の利用を通じて海洋炭素循環の駆動に深く関わっている。海洋原核生物には様々な種類が存在し、その生理特性や機能が異なるにも関わらず、多くの研究では、原核生物群集をひとまとめにして、物質循環過程への関わりを調べている。逆に、海洋原核生物が利用している基質の中味についても一様ではない。本研究では、化学的性質が既知であるモデル基質を用いて培養実験を行い、生理特性の違いを指標とした、海洋原核生物のより詳細な物質循環過程への関わりを明らかにすることを目的とした。海洋原核生物の中には、有機物を基質として利用する従属栄養型のもの以外に、無機炭酸を基質として利用する独立栄養型のものが存在する。本研究では、昨年度までに開発した、モデル基質として重炭酸塩を用いる海洋原核生物の無機炭酸利用能測定手法を様々な海域・水深の原核生物群集に適用し、それらの毎洋炭素循環過程における役割を調べた。この結果、検討を行った相模湾、相模湾沖、駿河湾沖、黒潮沖の4つの観測点における水深200~1500mの試料全てにおいて、無機炭酸利用能を持つ原核生物が、生体内へ取り込んだ無機炭酸の0.7~13倍の無機炭酸由来の炭素を溶存態有機物として多量に放出していることを確認することができた。このことから、無機炭酸利用能を持つ原核生物の物質循環過程への寄与が非常に大きいこと、その現象が様々な海域で普遍的に起こっていることが明らかになった。またこの他に、様々な有機基質の分解速度から、沈降粒子上の有機物分解活性や栄養塩再生活性を調べ、原核生物の代謝活性との比較から従属栄養型細菌群集の寄与についても考察した。
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巻: (掲載確定)