本年は海水の密度測定方法についての検討を行った。これまで、サンプリング容器や保存試験など詳細な検討を行った例は無い。これまでの文献では、測定理としては高精度な振動子による方法を用いているものの、実際の海水サンプルの測定精度は理想値よりも落ちるものとなっており、改良・検討の余地がある。 密度測定装置は、産総研所有のアントンパール社製DMA5000を用いた。カタログスペック上は0.001kgm-3の精度での測定が可能である。原理は振動子を用いたもので、.試料量数m1、数分で測定が可能である。測定装置の大きな改良は行う余地がないと思われるが、温度などの設定条件について最適なものを検討し、精度を求めた。 ます、理想的な条件として、濾過・脱気を行つた海水に対して、20℃で測定を行つた。ビーカーに試料を採取し、連続測定を行ったところ、数分で密度が増加した。これは、水分の蒸発によるもので、数分間のタイムスケールでも取り扱いに細心の注意が必要であることを示している。慎重に複数のプラスチックボトルに密閉し、1ボトルに付き1回の測定を行って繰り返し度を求めたところ、0.002kgm-3以下であった。本装置は、ポテンシャルとして、目的の精度を出すことが出来る性能を持っていることが確認できた。 サンブリンク容器について検討を進めたところ、一般的なブラスチックボトルは数ヶ月の保存では密度の上昇が見られ、水分の蒸発が起こっでいることが示唆された。一方、ガラス製バイアル瓶では密度の上昇が起こらず、かつ複数本測定した場合の繰り返し精度も0.002kg m-3程度に保たれた。 一方で、実際の海水の測定を行っていくうちに、様々な問題点も浮上した。低温での測定における機器の結露、振動管の汚れ、気泡の発生による密度変化の可能性、などである。これらの点について、問題点を整理し、来年度には解決手法を提示することを目標とする。
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