海水の密度測定法について、昨年度までの検討により高精度な測定が可能となったため、この手法を用いて実サンプルの測定を進めた。これと並行して、より実用的な手法の可能性について検討を行った。 手法の改善点として、常温で保存可能な容器について、検討を行った。現状で採用しているテフロンコーティングガラスバイアル瓶ではガラス質からのケイ素溶出のため、長期の常温保存が出来ないことが確認されたため、シリコン、ウレタンなどのコーティングについて検討を行った結果、いずれもテフロンコーティング以上のケイ素溶出抑制は確認できなかった。そこで、ガラス瓶をサルファー処理した後、テフロンコーティングを施したところ、テフロンコーティングのみの場合よりも若干ケイ素の溶出が抑制された。 併せて、オートサンプラーの使用についても検討した。オートサンプラーは密度計のオプション機器のうち、空気圧でサンプルを送り込むタイプのものを使用した。その結果、良好な状態では、ほぼマニュアル測定と同程度の精度で測定が行えることが確認できた。しかしながら、長期の使用中には不安定な結果も得られており、その使用については常に最高の状態を保ち、かつ標準試料測定の頻度を増やして機器の状況をチェックするなどの注意が必要なことが示唆された。 船上測定についても再度検討したところ、船の動揺によって明らかに値が変動することが確認された。したがって、船上の測定については相当の振動対策が必要と思われ、高精度測定が必要な場合には推奨出来ない。 西部北太平洋における観測を行い、亜寒帯域から亜熱帯域を横切る南北断面について、密度の測定サンプルを採取し、測定を行った。結果として、塩分と水温から計算される密度と実測密度の差はほぼ-5~+25ppm以内であり、表層ではマイナス(実測密度の方が小さい)であり、水深の増加に伴いプラスに転じ、増加する傾向であることが示された。
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