有機エアロゾル粒子に関する取り込み係数の測定結果精査および大気モデル計算による簡易感度実験を行った。バイオマス燃焼起源エアロゾルもしくは二次生成有機エアロゾル粒子の成分と報告されているジカルボン酸の内、コハク酸C2H4(COOH)2、アジピン酸C4H8(COOH)2、ピメリン酸C5H10(COOH)2、グルタル酸C3H6(COOH)2、を用いた反応実験では、高湿度(RH75%)状態における取り込み係数の結果が低湿度(RH35%)よりも大きいことが測定され、水及び錯体による結果が示唆された。加えて、低湿度状態の結果が他の無機化合物粒子(塩化ナトリウムや硫酸アンモニウム)との比較では、無機化合物の取り込み係数で同様の湿度で、0.01-0.04に対し、ジカルボン酸粒子では0.03-0.07と大きくなっていた。この結果は、低湿度状態にあるジカルボン酸粒子において粒子の表面上で化学反応によるHO2ラジカルの消失が存在していることが考えられる。同湿度状態におけるレボグルコサン粒子では、取り込み係数の増加が見受けられなかったため、ジカルボン酸中に存在するカルボキシル基にある水素との反応でHO2の消失が加速すると推察された。また、これまでの結果を整理し、大気モデル計算による簡易感度実験を行った結果、全球規模でのHO2ラジカルの変動が確認され、それに伴う、他のラジカル反応(特にOHラジカルに関わる反応)においても速度が変わっていることが示された。さらに季節によるHO2消失速度の違いも示され、今後、さらに詳細に詰めていく予定である。
|