研究概要 |
これまでの実験室での有機、無機エアロゾル粒子のHO2ラジカルへの取り込み係数測定を利用して、全球モデル計算を行い、不均一反応を考慮した際の寄与を見積もった。これまで測定した取り込み係数の湿度依存性を定量的にモデル計算に組み込むために、硫酸塩、有機物、機物、海塩、鉱物(依存性なし)に対して、定式化を行なった。粒子の状態(個体、液滴)により、湿度依存性は異なるため、それらを顧慮するために湿度0-45%,および45-100%に分割し、それぞれ定式化した。また、有機物に関してはバイオマス燃焼で発生する有機エアロゾル粒子に対しては、レボグルコサン粒子での測定結果を、二次有機エアロゾル粒子に対しては、ジカルボン酸粒子の測定結果を適用し、有機物の分類を行なった。また、湿度45%以下では粒子固体であると仮定し、表面反応のみであるため、反応生成物はH2O2とし、湿度45%以上では反応性生物は未知のため、未知生成物として設定した。これらのデータを利用して、全球モデル計算(CHASER)を2000年のデータを用いて行なった。季節ごとの変動では、エアロゾル高濃度の地域では、HO2ラジカル濃度が大きく減少することが明らかとなった。また、年間を通してHO2ラジカル濃度は約1%減少することが明らかとなった。また、太平洋上の一部において、船の排煙によるエアロゾル粒子が不均一反応に有意な寄与を持つことが明らかとなった。さらにHO2ラジカルにかぎらず、O3やCH4などの大気微量成分の生成、消失速度に有意な寄与を持つことも同時に明らかとなった。
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