研究概要 |
化石燃料や化学肥料の普及により里山の存在意義が一変し、放棄された里山が拡大しつつある。集水域における土地利用の変化は、河川水質の変化を介して、その流入先である湖沼や海洋の生態系を改変する。それと同様に、里山の管理放棄は、水の流出経路や土砂生産源を変化させ、河川・海域の生態系に影響する恐れがある。したがって、里山の放棄のような流域の土地利用の変化が、水・土砂流出にどのような影響を与えるのか、正確かつ簡便に評価することが不可欠である。 そこで本研究では、里山の管理放棄が土砂移動やそれに伴う物質輸送に及ぼす影響を明らかにすることを目的として、過疎や高齢化が問題となっている奥能登地域(珠洲市および七尾市)において、広葉樹二次林(いわゆる里山)を集水域とするため池で湖底堆積物柱状試料を採取した。現在、堆積物試料の粒径組成,放射性降下物(セシウム137および鉛210),有機物の分析を行っている。放射性降下物の深度分布に基づいて、堆積年代を決定し、里山の環境が激変したと考えられる1960年代に着目し、その前後で里山流域の土砂移動や物質輸送がどのように変化したのかに注目して解析を行う。
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