東アジアにおけるダスト発生年々変化の原因を砂漠化など地表面状態の変化と気候変動による強風発生頻度の変化に区別するため、ダスト発生臨界風速、強風発生頻度、ダスト発生頻度、各種地表面状態の解析を行った。 1. 各気象測候所における1970年代から2000年代まで10年単位で臨界風速の5パーセンタイル値(ut5%)を見積もりマッピングした。 2. 全測候所について、ut5%と地表面状態の関係を議論することは困難であるため、2000年代において少雨傾向であったモンゴルのマンダルゴビという地点に焦点を絞り、夏季降水量とut5%の経年変化の傾向が同じであることを明らかにした。 3. 臨界風速の解析では母集団を稼ぐために10年単位で解析を行っていることが欠点であるため、1970-2008年のut5%を強風のしきい値とし、1年ごとの強風発生頻度(f_u>ut5%)とダスト発生頻度(f_Dem)、夏季降水量の関係を調べた。この解析においてf_Demとf_u>ut5%の比を正規化ダスト発生頻度(f_NDem=f_Dem/f_u>ut5%)とした。この解析より、マンダルゴビでは夏季降水量とf_NDemが負の相関関係にあることが分かってきた。 以上のような負の相関関係が得られたのは、マンダルゴビが夏雨領域の草原と砂漠の境界付近に位置しており、夏季降水量が植生量の経年変化に大きく影響しているためと考察している。しかしながら、負の相関関係から大きく外れている事例もあるため、積雪、凍土、土壌水分、土地利用など他の地表面要素についての解析が必要である。また、マンダルゴビ以外の地点についても、同様の解析が必要である。
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