東アジアにおけるダスト発生の年々変化の原因をerosivity(風食を起こす風の能力)とerodibility(土壌・地表面の風食感受性)に区別するため、ダスト発生頻度、強風発生頻度、ダスト発生臨界風速の解析を行った。Erodibilityの変化を議論するため、降水量、NDVIなどの土壌・地表面状態の解析を行った。当該年度の解析より、SYNOP報の降水量データが1980年代以前にエラーが多いことが分かったため、1990年以降に焦点を絞った。1.1990年代と比べて2000年代はモンゴル、内モンゴル、中国東北地方、河西回廊においてダスト発生頻度が増加、2.内モンゴル西部(砂漠)、河西回廊(砂漠)ではerosivityの変化(強風発生頻度の増加)がダスト増加の原因であり、3.モンゴル(草原)、内モンゴル東部(草原)、中国東北地方(耕作)においては、erodibilityの変化(臨界風速の減少)がダスト増加の原因であることが分かった。Erodibilityの変化の原因解明にあたって、草原域の草に着目し、春~夏に生長した草が春に枯れ草として残り、枯れ草がerodibilityに影響しているという「枯れ草仮説」を提唱し、夏季降水量、NDVIの解析から枯れ草仮説が成立する可能性が高い領域を特定した。この結果は雑誌Geophysical Research Letterに論文投稿した。 また、信頼できる降水量データをモンゴル水文・気象研究所より入手し、マンダルゴビ気象台におけるerosivity、erodibilityとダスト発生の関係について調べた。この作業より、夏季植生が多いときは枯れ草仮説が成立しているが、少ないときは枯れ草以外の要素(例えば、積雪、凍土、融解水、放牧)がerodibilityに効いている可能性があることを示した。この結果は雑誌SOLAに論文投稿した。
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