研究概要 |
残留性有機汚染物質(POPs)による地球規模での環境汚染は20-21世紀の最も重要な環境問題の一つとして取り上げられている.POPsの環境媒体中における動態を高精度で予測する数値モデルの開発は不可欠であるが,全球を時空間的に高い解像度で解く多媒体モデルは少なく,また,海洋における深海までの空間輸送と生物学的なプロセスまでを考慮したモデルは世界的に見ても構築されていない.このような背景を踏まえ,本研究では,深海輸送,及び海洋光合成微生物への生物濃縮までを考慮するPOPsの非定常全球多媒体モデルを構築し,公開することを目的に研究を行っている.本研究の基盤となるPOPsの全球多媒体モデルのFATE (Finely-Advanced Transboundary Environmental model)は平成20年度より開発を開始しているが,本年度は新たに,水平方向に0.5。,鉛直方向に54層の解像度を持つ高解像度海洋輸送モデルを開発してFATEに組み込んだ.また,海洋光合成微生物への生物濃縮を解くプロセスモデルをFATEに導入し,PCBsを対象として過去約80年間の長期シミュレーションを行った,この結果,海洋光合成微生物の深海への沈降がPCBsの環境中からの重要なシンクになってきたこと,及び,中深海にPCBsの高濃度海域が存在してきたことを明らかにした.これらの結果の一部は2009年8月に行われた国際学会において発表しているこれまでのところ,ほぼ,申請時に提示した計画通りに研究が進んでいる.現在はFATEの公開に先立ち,研究成果の公文化とホームページの準備を進めており,次年度(最終年度)には問題なく,研究成果を一般公開できる見込みである.
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