研究概要 |
残留性有機汚染物質(POPs)による地球規模での環境汚染は20-21世紀における最も重要な環境問題の一つとして取り上げられており,POPsの環境媒体中における動態を高精度で予測する数値モデルの開発は不可欠である.本研究では,POPsの環境媒体中における物理・生物・化学的な非定常動態を詳細に評価する高解像度全球多媒体モデルFATE (Finely-Advanced Transboundary Environmental model)の開発を行ってきた、前年度(平成21年度)にはFATEの高解像度海洋モデルを開発し(水平解像度0.5°,鉛直54層),海洋光合成微生物への生物濃縮を解くプロセスモデルを導入した.本年度は前年度までに開発したモデルを用いて,海洋における生物学的(有機炭素の沈降),物理学的(深層水の形成)プロセスによるPCBsの深海輸送を検討し,この結果に対する誌上・学会発表を行った.また,新たに対象物質をPCBsの11コンジナーに拡張し,全媒体(大気,海洋,土壌,植生,氷圏)に渡る主要プロセス(移流スキーム,海洋生産モデル,大気・海洋境界層スキーム,乾性沈着スキーム等)の大幅な更新を行った.研究成果の一般公開に関しては,研究実施計画に示していたように,FATEのウェブサイトを作成し,試験的な運用を開始している.現在,モデルの完全な一般公開には至っていないが,共同研究者に対しては,ウェブサイトを通して,最新バージョンを随時公開している.
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