研究概要 |
本研究の目的は、有用な植物資源の効果的な利用と保全に関する調査研究を通じて生態系サービスのひとつである植物資源の価値を評価し、国内の環境政策制度の課題を明示することである。 2009年4月から12月にかけて、北海道内に生育する経済的価値の高い植物(薬用植物)のデータベース作成を行った。また生態系サービス評価の調査対象域として釧路地域を選択し、聞き取り調査およびステークホルダー会議を9月に開催した。会議では過去50年間の環境や酪農システムの変化について議論が行われ、生態系サービスとの関連について考察した。主な議論は地域の自然環境と酪農システムの変化についてであった。特に酪農システムは大規模化に対応した効率化が急速に図られ、放牧の減少や機械化などより自然資源とは離れた営みへと変化した。一方で,多くの参加者が河川水位の変動や動植物個体数の増減など自然環境の変化に言及し人間活動との関連性を考察していた。ステークホルダー会議の結果から、住民視点の生態系サービスについての考察を試みた。生態系サービスは土壌形成などの基盤サービス,食糧や木材,燃料などの供給サービス,気候・洪水調整などの調整サービス,文化的サービスに分類される(Millemium Ecosystem Assessment 2005)。対象地域では供給サービスに関する情報のみならず、調整サービスやその他の基盤サービスはより重要な生態系サービスとして考えられた。また今後は生態系の炭素隔離機能の定量化やまた生態系サービスを提供する生物多様性との関連について科学的な指標を用いて評価し,情報を提供することが資源管理において有効であることが示唆された。
|