本研究では廃棄自動車(End of Life Vehicle、以下「ELV」と表記)の精緻な解体と分別による資源の高効率回収のための技術と制度について、その展開・発展の方向性を主に日本、追加的に中国・韓国を対象に検討・提示する。 廃棄物のトレーサビリティの達成は、回収・分別後の資源の質を保証し、『リサイクル率を向上させる上で重要な役割を果たす。本研究の一環として、みやぎ自動車リサイクルセンターにおけるトレーサビリティシステムを検証した。その結果、従来国内向け部品でしか達成しえなかったトレースを海外向けの部晶でも達成することができるようになっていた。しかし一方、ELV解体業が扱うマテリアル品については、商慣行から、銅の含有量を現状以下にする必要も無く、ダストを減少させる取り組みにもインセンティブが生じにくいことが明らかになった。この傾向は、類似のELV処理フローを持つ韓国もほぼ同様と考えられる。従って、現状ではELVからの希少金属類の回収は緒についたばかりであり、家電製品等を対象とするいわゆる「都市鉱山」に比べてやや立ち後れている。 中国では、これまではモータリゼーションに伴う自動車需要を充足させるため、ELVの発生自体が少ないと思われていた。しかし、沿岸部以外にもレアメタルを産出する内陸鉱山都市でも急速な経済発展が進み、リサイクル業全般への要求が高まっている状態にある。 これまでのELVリサイクルは、日本国内のそれが水平的な展開だったのに対し、アジア~アフリカを視野に入れると垂直的な構造となっていた。経済成長やモータリゼーションは、この構造を変化させつつあることがわかった。
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