研究概要 |
本研究の目的は、森林組合の広域再編が組合経営のみならず、地域森林管理にどのような影響を与えつつあるのかを検討することにある。本年度は、これまでも現地調査を進めてきた山陰、山陽地方の6県に対し追加調査を進めつつ、新たに北海道を事例地に加えて森林組合の経営動態の解明を試みた。初年度に本格的な調査をおこなった山陰・山陽地方については、広域再編に関する政策動向を整理し、組合合併が地域資源管理に与えつつある影響について検討した。その成果の一部は、「森林組合の広域合併と再編計画の現段階-山陰・山陽地方の森林組合対策に注目して」(『TORCレポート』,2011年)に掲載された。そこでは、林野庁の提起する1県1組合という再編方針は必ずしも各県の政策目標として設定されているわけではないこと、森林組合の合併や「平成の大合併」の進展に伴い、地域差はあるものの、森林組合の事業範囲と市町村、県の出先機関、森林計画区の範囲にねじれが生じていることを明らかにした。本年度は以上の成果を踏まえ、鳥取県、岡山県、広島県、兵庫県の4県の単位組合の財務諸表データの入力と分析をおこなった。また、北海道については、広域再編の経過と現状、政策動向に関して道庁の担当者に聞き取り調査を実施し、単位組合の時系列財務諸表データを入手した。本年度の調査研究を通じて、山陰・山陽地方における森林組合対策の実態と課題、および北海道における森林組合の経営動態の概要を明らかにすることができた。
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