本研究の目的は、国内の森林管理の中核的担い手である森林組合の経営活動に焦点を当てて、財務諸表データの分析を通じて、合併再編期にある森林組合の経営をめぐる現状と課題を明らかにすることにある。今年度は、北海道を主要な調査事例地として設定し、上記課題にとどまらず、森林組合の合併再編をめぐる政策動向が組合経営に実際にどのような影響を与えているのかを明らかにした。具体的には、北海道内における森林組合の広域再編の経過や現状、政策動向の実態を把握するため、現地調査を実施するとともに、財務諸表データをはじめとする経営関連資料の入手に努めた。単位組合の時系列経営データについては順次入力を進め、今後、その詳細な分析をおこなう必要があるものの、広域合併した組合においても、総取扱高に占める事業管理費の割合は上昇傾向にあるなど、合併による経営コスト削減効果は必ずしも達成できているわけではないことが明らかとなった。このほか、本研究の初年度から継続的に調査を進めてきた山陰地方(鳥取県、島根県)、山陽地方(岡山県、広島県、山口県、兵庫県)についても、現地調査などを通じて最新情報を入手した。その結果、同地域における組合経営は一段と厳しさを増しており、広域合併は経営改善に必ずしも結び付いてはいないことが明らかとなった。以上のように、本年度は、上述したような調査研究を通じて、北海道および山陰、山陽地方における森林組合の経営動態の一端を明らかにすることができた。
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