本研究の最終年度である2012年度は、これまで検討してきた8道県の森林組合の経営分析の結果を踏まえ、森林組合の事例調査を引き続き行ったほか、森林組合政策の現状分析にも取り組んだ。政府は2009年12月に「森林・林業再生プラン」(以下、再生プラン)を公表し、「森林・林業の再生に向けた改革の姿」(2010年11月)の策定を経て、2011年には森林法の一部改正や准フォレスター研修を開始するなど「再生プラン」の具体化に着手してきた。森林組合については、「持続的な森林経営を担う森林組合改革、林業事業体の育成」に向け、その役割を施業集約化や合意形成、森林経営計画の作成を最優先の業務とする方針が打ち出された。また、森林整備の低コスト化を実現するため、森林組合と民間事業体の間で競争が働く仕組みの構築(イコールフッティングの確保)を進めるなど、森林整備への競争原理の導入が明記された。確かに「再生プラン」では森林組合の合併推進に関する言及はみられないが、競争原理導入の表明は、これまで林野庁が推進してきた森林組合の規模拡大路線を事実上、後押しする動きであるということができる。本年度は以上の政策研究を進めたほか、森林組合の合併が実際の組合経営にどのような影響を与えているのか、雇用面にまで視点を広げて現地調査に取り組んだ。北海道内の事例調査では、合併組合においては、経営状況が合併後必ずしも好転しているわけではないこと、財務体質の改善もほとんど進んでいないことが明らかとなった。また、一部の組合では、直営作業班の切り離しなどリストラが行われていた。そこでは、財務体質の強化を図るため下請化を進めたことが、組合自らによる労働力の安定的な確保の道を閉じさせ、経営の先行きを不透明にするという動きがみられた。以上のような政策研究および個別事例の実態調査を通じて、合併組合の経営動態の一端を明らかにすることができた。
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