研究概要 |
第1に,昨年度までの研究の知見に基づいて英文論文を投稿し,Journal of Environment and Developmentに掲載された.これは主にタイと中国に供与された世界銀行,ドイツ・デンマーク,日本の環境援助プロジェクト・プログラムのうち類似のものを取り上げ,なぜ同じ問題に対して異なるアプローチ(援助)をとったのか,また異なるアプローチを、とることによって援助効果にどのような相違が生じたのかを検討した.この結果,異なるアプローチをとったのは,環境援助に固有の効果発現を阻む障壁を克服する際の政策施行,受取国との権力関係,資源動員能力の相違に起因できることを明らかにした.同時に,異なるアプローチをとったことによる援助効果の上昇効果は,検討した分野ではあまりみられず,むしろ受取国が環境保全を積極的に主導する誘因に大きく影響を受けてきたことを明らかにした. 第2に,ヴェトナムでの聞き取り調査の結果,環境援助供与機関の間の競合はヴェトナム投資計画省が調整しているため,同じプロジェクトの間での直接的な競合は起こりにくくなっている.しかも,日本はヴェトナムにおいても水分野への援助では,従来型の大都市を対象とした大規模上下水道システムの整備とシステム管理能力向上,料金制度導入のための支援を行っているが,ドイツは政府方針として全ての援助に気候変動の要素(緩和ないし適応)を組み込むことになったために,従来型の大規模上下水道システムの導入から分散型・中規模システムに転換した.この点で,同一プロジェクトの競合から事業モデル間の競争へと転化していることが明らかとなった.
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