研究概要 |
本研究課題では,都市内に存在する木質資源ストックの有効利用に向けて,市場価格に現れない隠れた価値をエコバリューとして定量的に評価する.その結果を基に,循環共生型住宅システムの実現に向けた施策を提案することが研究の目的である. 本年度は,木質循環利用技術インベントリの調査,および木質資源の分布型空間データベースの構築を行った.具体的には,埼玉県における廃木材処理施設の処理能力,埼玉県における解体廃木材発生量を調査しデータベース化した.さらに,廃木材処理施設が有する環境負荷削減ポテンシャルの評価を行った.その結果,埼玉県における廃木材処理施設の多くは,チップ化を貝的とした破砕処理施設であり,それらの処理能力を合計すると1日あたり4,118トンであった.一方で,解体廃木材の発生量は年々増加することが予想されるものの,埼玉県内の廃木材破砕処理施設の処理能力を大きく下回ることが分かった. 埼玉県におけるチップ化を目的とした破砕処理施設のCO_2削減ポテンシャルを評価した結果,重油代替効果と比較して,チップ化に伴う電力消費,軽油消費によるCO_2排出量はわずかであり,重油代替効果からチップ化に伴うCO_2排出量を差し引いたところ,年間で720kt-CO_2という結果となった. さらに,本研究で構築しつつあるGISデータベースを用いて,水処理技術システムを導入した場合のCO2排出量について分析した.その結果,人口密度500人/km^2前後が,下水道と浄化槽のいずれを設置すべきかについての閾値となった.ここで得られた知見は,来年度に予定する循環共生型住宅システムのエコバリュー評価において反映させる計画である.
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