本研究は、持続可能な発展を達成するための生態系のレジリアンスの評価および管理の在り方について提案することを目的とするものである。本年度は、現在の科学発展のものでは、自然環境や生態系のメカニズムは完全にはわからないという現実的な状況(いわゆる不確実性下)において、現時点で開発をすすめるべきか否かという意思決定に関する理論的な考察、および、環境変化に基づく厚生変化の評価モデルの構築を行った。特に、将来の状態を確率的にも完全には予測できない不確実性(曖昧性)を想定した。本研究課題であるレジリアンスの管理および評価を考えるうえで、このような将来の確率分布さえもよくわからない曖昧性下における意思決定や評価は避けては通れない。そのため、本年度は曖昧性下における自然開発の意思決定問題と評価法の開発に重点を置いた。主要研究成果は大きく以下の2点にまとめられる。1.環境変化の厚生変化を評価するための曖昧性下の意思決定理論と整合的な計量経済モデルを構築し、そのモデルを実証的に応用して評価を試みた。2.曖昧性下における不可逆的な自然資源開発問題を理論的に考察し、将来自然環境に関するより詳しい情報が得られる場合において、現時点で開発を進めるべきか否かを判断する条件を導出した。この条件は意思決定者の曖昧性およびリスクに対する選好に依存するものであり、従来の研究成果を包含するより一般的な条件を導出することができた。
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