研究課題
若手研究(B)
佐賀市内小学校の児童における有機リン系難燃剤(PFRs)の摂取量削減の方策を提案するため、小学校教室から採取したダスト中PFRsを定性定量し、その摂取量の推定に取り組んだ。本調査では、まずダスト中PFRsの化学分析法を確立した。また佐賀市教育委員会と協力し、佐賀市内小学校の教室内試料(製品部材・大気・ダスト)を採取した。個人暴露試料の採取には佐賀大学附属小学校をモデルフィールドとして活用し、大気試料やダスト試料、手拭き取り試料を採取した。それら採取試料を化学分析に供試したところ全てのダスト試料からPFRsが検出され、分析対象とした19種類のPFRs の中から14種類の物質が検出された。検出されたPFRsの中ではリン酸トリスブトキシエチル[T(BxEt)P]が最も高濃度で検出され、その濃度範囲は3600~1900000ng/g乾重であった。ダスト試料中のPFRs濃度を小学校教室と一般家庭の間で比較したところ、小学校で採取されたダスト試料中のPFRsが有意に高濃度であった。小学校の普通教室と特別教室の間でPFRs濃度を比較したところ、有意な濃度差は見られなかった。一方で小学校Aの普通教室では特異的に高濃度のPFRsが検出された。その要因を特定するために総PFRs濃度に対する各PFRs濃度の割合を参照したところ、T(BxEt)Pが総濃度の99%を占めていた。T(BxEt)Pはフロアワックスに多く利用されることが知られている。A小学校では特にT(BxEt)Pの割合が高い(>90%)ことから、フロアワックスの影響をうけていることが考えられる。次にPFRsの毒性影響を推察するため、ホコリ試料を介したPFRs子供のPFRs取り込み量を一日耐用摂取量(TDI)と比較した。その結果、T(BxEt)Pの取り込み量はTDIを最高で19倍超過していることが明らかとなった。今後の取り込み量の低減技術の開発が望まれる。
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Chemosphere 78
ページ: 1213-1219
日本衛生学雑誌 64
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http://environbio.ag.saga-u.ac.jp/ueno/index.html