研究概要 |
安価で環境負荷の低い不溶化技術は,射撃場および鉱山跡地の広範な重金属汚染対策として有効である.多くの汚染現場で急務とされる荒廃植生の回復という問題に対応するために,緑化と金属不溶化の両方に対応した対策技術が必要であることを鑑みて,重金属汚染対応型の緑化基盤材の開発が必要である.そこで,本研究では,植物根の生理活性を受ける根圏土壌において,(1)重金属の溶解-析出や金属の化学形態と,(2)金属不溶化と植物生育に伴う,微生物生態系の修復との関係を明らかにすることを目的とした.鉛汚染土壌にリン資材(水酸アパタイト)を添加し,植物を100日間生育させた.そして,土壌の鉛とアンチモンの形態に対する植物根の生化学影響の有無を確認するために,土壌は根周囲の土壌とそれ以外の非根圏土壌に分けて採取し,これら金属の化学形態と,土壌の微生物多様性を分析した.士壌の鉛の化学形態は,有機物,酸化鉄,マンガンと吸着していることが確認された.この土壌にリン資材を添加した場合,鉛はリン化合物(緑鉛鉱)を形成して不溶化されることが熱力学的に予想されたが,土壌の鉛全体における緑鉛鉱の生成割合は30-40%に留まった.この要因としては,リンが土壌の鉄やアルミニウム鉱物と吸着されて,鉛の不溶化反応への利用が抑制されたことが考察された土壌中のアンチモンは5価の形態で存在していることが確認された.詳細な化学形態の同定は解析中である.土壌の細菌叢多様性(DGGE)は,植物と不溶化資材を併用することによって高まる傾向が見られ,汚染土壌における微生物生態系が修復されている可能性が示唆された.根圏と非根圏土壌において,これら金属の化学形態には明確な変化が見られなかったことから,根のごく近傍における土壌を採取して分析することによって明らかになると思われる.
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