研究課題
堆積物食性多毛類イトゴカイは、有機物汚染域に生息する代表的な底生生物であり、高い有機物分解能力を有する。堆積物中の有機物の分解は、イトゴカイと細菌の協働により促進されると考えられるが、有機物分解に関するイトゴカイと細菌の相互関係は明らかになっていない。本研究では堆積有機物の分解に関するイトゴカイと細菌の相互関係の解明を目指している。今年度は、養殖場海底においてイトゴカイ高密度時に堆積物中のAlphaproteobacteria門に属する細菌群が増加する結果を当該分野のトップジャーナルである国際微生物生態学雑誌、ISME Journalにおいて発表した。このようなイトゴカイの生育に密接に関係している細菌系統群を明らかにするために、愛媛県南宇和郡愛南町南部に位置する海域の魚類養殖場の海底(水深60m)より採取したイトゴカイと、同海域で採取し室内において約490日継代培養したイトゴカイを試料とし、RT-PCR-DGGE法によりイトゴカイの体に生息している細菌群集構造を比較した。両者のバンドパターンは類似しており、主要なDNAフラグメントの位置が一致していたことから、特定の系統に位置する細菌がイトゴカイの生育に関係または体に生息していることが明らかになった。現在この結果の解析を進めている。並行して、堆積物中の有機物、細菌、イトゴカイの相互関係を解明するために、安定同位体標識されたキノンおよびDNAを指標に、堆積物中の細菌に対するイトゴカイの選択的な摂食の有無の評価と、イトゴカイの分泌物を分解・資化して増殖する細菌種の特定といった研究に取り組んでいる。
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The ISME Journal
巻: DOI:10.1038/ismej.2011.57(In press)