近年、貴金属需要の急増によりその採掘量が増大している。結果、埋蔵量の少ない天然資源としてその枯渇が懸念され始めており、廃棄物や廃液から貴金属を回収する技術が益々重要になっている。廃液からの回収方法としては種々の方法が之までに考案されているが、プロセスが煩雑であり、より低コストでクリーンな回収方法の開発が望まれている。 本研究では、低環境負荷の新しい回収技術として光触媒を用いるプロセスの可能性を検討した。ヘテロポリ酸イオンであるSiW_<12>O_<40>^<4->を界面活性剤と複合化した有機・無機ハイブリッド光触媒を用いて、クロロフォルムと金イオンを溶解した水の2相系において、金イオンの光還元により金を粒子として回収することを試みた。ハイブリッド光触媒は水には溶解しないが、有機溶媒には溶解するという特徴があり、これを水と有機溶媒との二相系に溶解させると、ヘテロポリ酸イオンの高い親水性により、水相と有機相の界面にハイブリッド触媒が集まる。この特性により、有機溶媒-水界面という二次元的な空間を反応場として、厚さ70nm、幅1-20μmのシート状の金粒子が調製できることを確認した。シート状の貴金属粒子はその特異な形状異方性から回収が容易であり、本プロセスは貴金属の新しい回収技術として期待できる。また均一系の光触媒を用いて2相系で反応を行うことで、触媒の繰り返し使用が可能となることを確かめた。さらに、回収効率の更なる向上を目指して、金粒子に対する高い吸着特性を有するジチオールの添加を行った所、回収効率が大きく向上することを見出した。また、ハイブリッド化させる光触媒として二原子欠損型γ-SiW_<10>O_<36>^<8->を使用することで、シート状粒子の生成率が向上することがわかった。
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